「それで此方が控え室です、着替えは此処でして下さい。
向かいの扉が男性用の控え室です。」
「はい、わかりました。」
どうぞ、と差し出された衣服を手に取る。
荷物を置くロッカーも此処にありますので、使ってください。と説明を受けながら進む。
順番にお手洗い、休憩室と案内されて今は控え室の中にいる。
「それが指定服です、あちらのカーテンで着替えてください。
使用してなければ、カーテンは必ず開けるように。」
「わかりました、着替えてきます。」
一室一室、丁寧に紹介して貰いながらメモを取って今。
真城さんが言っていたのは、
洋服屋の試着室みたいなカーテンで仕切られたスペース。
ホールにいた、女性店員さんや真城さんと同じ指定服に袖を通す。
当然ながらジャストサイズで、腰に紺色のエプロンを巻く。
「着れました、こんな感じで大丈夫ですか?」
「ええ、似合ってますよ」
私の言葉に真城さんは笑い返してくれて、
代わりに名札を手渡されて。
名札には〈Hazumi〉と書いてあった。
安ピンで胸元のデザインの下につける。
「それでは、一度ホールに戻りましょうか。
他の方を紹介しますね。」
「はい、ありがとうございます!」
ホールに出れば一ノ瀬さんの他に2人いたのに、
接客しているのは一ノ瀬さんを含む2人だけ。
接客と言っても、お客さんは数人。
「真城さん、もしかして新人さんかい?」
そう話しかけてきたのは、私がお店に来た時には
いなかったカウンター席のお客さん。
おじいさんって言うには少し若い、おじさんって感じの人。
多分、常連の方かもしれない。
「はい、今日からの子ですよ。
一ノ瀬くん、花の水やりしてきてくれる?」
「はーい!掃除もしてきますね」
「お願いします。
こちらね、ずっと来て下さってる常連さんなの。
近くの時計店の店主さんよ」
「常連ってほど来てないだろう。
ただ、珈琲を飲みに来てるじぃさんだ。」
「あら、常連になって頂くんですよ。」
と、笑っている2人。
二人の仲の良さから、きっと常連さんなんだろう。