時が経つのは早くて、気が付くともう土曜日だった。
……そう、バイト初出勤日。
部屋の鏡の前で、得意じゃないお化粧をしながら考える。
当たり前だけど余裕を持って家を出て、真城さんに挨拶して。
他の店員さんにも挨拶して、駄目だ緊張してきた。
接客業は経験があるけれど、喫茶店みたいに商品は運ばなかったし。頑張るしかない。
薄くメイクしたのは、『女性スタッフは最低限ファンデーションだけつける』という決まりらしい。
言わなくとも、真城さんの説明。
姿見で服装をチェックする。
ハイウエストの黒のスキニーパンツに、
白に青の大きめのチェック柄のシャツ。
服装は統一でお店で支給されるらしいから、私服で行く。
靴はスニーカーか、ヒールの低いパンプスのどっちかだそう。
何を着て行こうか悩んでて。
ゆるっとしたシルエットだけど、シャツできちんとして見えるかなって。
髪はサイドで一本結びにして。
ファーストコンタクトは好印象がいいし、
何より着慣れてて自分っぽいと思った。
着飾る必要はないから、アクセサリーは要らない。
そろそろいい時間なので、もう一度クルッと回って身だしなみを整える。
シンプルな腕時計をつけて、バッグの中身も確認する。
滅多に出番の無いバッグだったから、今日から仕事用にしよう。
メモ帳とちょっとしたペンケース、メイクポーチと...。
必要な物だけを入れて、立ち上がる。
テーブルの上の手鏡を閉じたら、携帯をポケットに押し込む。
お気に入りのスニーカーを履けば、自然と前向きになれた。
「よしっ、頑張ろう。」
歩き出すと、もっと上手くいきそうだと思えた。