ブランコで遊んでた子供は、いつの間にかボールで遊んでいて。
結構な時間、座ったままでぼーっとしていたみたいだ。
このままぼーっとしていてもいいのだけれど。
特に、此処に来た事に理由はないし。
私も小学生の時はあんな風に、楽しそうだったのかな。
流石に、この時間に小学生はいないけどね。
あまりにも楽しそうに笑って、
嬉しそうにボールを追うから純粋に気になった。
ピロン、と鳴った私の携帯。
さっきお母さんに送ったメッセージの返信だろう。
そう言えば今、何時なんだ?
丁度、携帯を取り出した時だった。
ふと見ると、足元に転がって来ていたボール。
持ち主を確認しようと、転がってきた方を見る。
そこには此方をじーっと見ている、女の子。
母親とボールで一緒に遊んでいた子供だ。
少し距離がある所から転がってきたみたいで。
人見知りなのかな。と、取りに来る様子を見せない子供に勝手にそう思う。
母親が何か女の子に言っているけど、やっぱりこちらを見たまま動こうとしない。
何だか微笑ましく思って、ボールを拾い上げる。
近づくにつれて、だんだん視線の上がるその子。
しゃがんで視線を合わせると、左右に揺らぐ黒目。
はい。とボールを差し出すと、両手で受け取ったその子。
「ありがとう」
小さいけど、確かに聞こえた声。
「どういたしまして。」
私はなるべく笑顔で、そう伝えた。
此処に来た理由、今わかった。
……本当の所は、ただ来たかっただけなんだ。