中学生の時に持った夢だったかな。
気づいた頃にはずっと言っていたから、忘れてしまったけれど。
いつからか、美容師になりたかった。
いや、今でもなりたいんだけどね?
「どうしてなりたいと思ったのか、あやふやにしたまま目指そうと思わなかったの。
なりたい理由が分からなくなる様な程度だった、って言われればそれまでだけど。」
……本当に、諦めた訳じゃないんだ。
周りが進学や就職だって慌ただしくても、
それだけが引っ掛かってしまって。
一度も焦ったり、進学しない道を本当に選ぶか迷わなかったなんて、それは嘘になるけど。
親にだって、後悔するかもしれないよって言われたし。
「まぁ、それはいいじゃん。
理由を再確認できたら、まだ目指す道はあるしね!」
無駄に明るく、自分じゃ無いくらいに前向きだった。
正直、後悔をしてないなんて言い切れない。
でも、全部間違ってる訳でも無いし。
そんな私に気を使ってくれたのだろう、2人は話を逸らした。
他にも沢山話した。
千堂のバイト先の人が面白いとか、くだらない事で笑い合った。
「そうだ、川中ってわかるだろ?
あいつ、第一志望の大学に行かなかったみたいだぜ。」
いつかの川中さん。
私達の話だけに留まらず、同級生が今は何をしてるかって話になった。
千堂は、"理由はわかんねーけど"と付け足して不思議そうな顔をする。
「川中ちゃん、結局悩んで進路変えたからみたいだよ。
周りがおすすめしなかったらしい。あの性格上ねー」
確か、接客系統の仕事をしたいって前に言ってたっけ。
……まぁ人見知りだし大人しいから、すすめられないのも分からなくはないかな。
すごい熱心に、進路の資料とか読んでたけどなぁ。
「そっかぁ。あんなに真剣だったしね。」
そう言った私に、愛海は…
「酷い言われ方したみたいよー。繊細だからね、あの子。」
そう返したのだった。
確かに川中さんは誰に悪く言われようと、
"私がそう言われちゃうのは仕方ないから"
なんて頼りなく笑ってた。
優しい性格だからこそ、人に悪く思われてしまう。
言い返す事だってしない子だ。
そう思うと、なんだか残念に思えて仕方が無かった。