コトン、コトンと乾いた足音がする。
ヒールの、今では当たり前となった靴。
風景は変わっていないのに、
私 独りだけが変わってしまったみたいに。
「お前…。」
ふと、声がする。
ボーッとしていた私は、ゆっくり振り返る。
「もしかして、咲?
波純 咲(ハズミ サキ)!?」
波純 咲。確かに私の名前だ。
まず、目の前で騒ぐ この男は誰だ。
「咲!覚えてないか?
俺、千堂 駛真(センドウ ハヤマ)!!」
千堂…。
中学の時、同じクラスだった奴か。
名前も苗字みたいだったから覚えたんだよな。
「なんで此処に?
引っ越したんじゃなかったのか?」
「確かに引っ越した。
でも、今日からまたこの街に住むんだ」
千堂は、ビックリした顔で瞬きをしている。