なんとなく、メッセージを見たままつけっぱなしだった携帯の画面を暗くする。


このまま画面を明るくして置くと、ゲームのアプリを開くかもしれないしね。

……それに愛海も、もう来るだろうし。




平日の午後の街を行き交う人々。


私みたいに、独りぽつんといる人なんか居なくて、皆キラキラと輝いて見える。

"都会"なんて言葉が似合う街なんかじゃ無いのに、たくさん人が歩いている。


孤立した別世界に独り居るみたいな、そんな感覚になる。

私が特別とかなんじゃ無くて、私が異常の様な気がするんだ。

ただ独りよがりなだけ、なんだろうけど。



「咲、ごめん!遅くなったっ。」


淡いブルーのスカート姿の愛海。

急いで来たのだろう、軽く頭を下げながら息切れしている。


「いいよ、全然。
私も本当は、少し予定が長引いちゃってて遅れそうだったから。」


よかった~!怒ってるかと思ったと、安心した顔の愛海。

だから、怒ってないってば。とか、心の中で思ってみる。


「じゃ、早速行きますか?
さっきの遅刻で、時間を無駄にしちゃったから。」

愛海は遅れたのが、相当悔しいらしい。

なんでそんなに、時間にこだわるのだろう?

急がなくても逃げないじゃん、何も。




「そうだ!駅のとこで咲ぼーっとしてたけど、どうしたの?考え事?」

そんなに、ぼっとしてたのか?格好つけてたみたいで、やだな。



「ちょっとね。人が沢山居るなーって。」

「何それ、当り前じゃん。変なの~。」


愛海は不思議そうだ。

それも、そうか。突然、当り前の事を言われたんだから。



今は駅前の通りを歩きながら、あまり内容の無い会話を楽しんでいた所。

愛海とは、何の話をしたらいいのか。イマイチ、掴めていない。


目の前とか手元に何かあれば、それなりにザックリとした会話は出来るけど…。