ぼーっと、窓の外の夜空を見上げる。
流れ行く風景が、ここ何日かで見慣れた景色に変わる。
私は結局、何も言えなかった。
アオさんは、何について言っているのだろう。何を思って発した言葉なのだろう。
それを考えても、何も答えなんて出て来なかった。
マンション入口前の歩道脇に、静かに止まった車。
「咲、さっきのはただの独り言だから。
困った事があったら、電話頂戴。待ってる」
何事も無かったかの様に、いつも通り微笑んでアオさんは言った。
「うん、ありがとう。アオさんも無理しないで。仕事頑張ってね」
私もいつも通り、いつもの別れ方。
うん、と言うアオさんの返事を聞いて、車のドアを閉めた。
走り去る淡い緑色の可愛らしい車を見送って、ゆっくり空を見上げた。
これでいいのかな。
何だか、中途半端にしてしまった気がする。
胸に架かったモヤは、気付かなかった事にしよう…。