『咲、久しぶり。』
そう言ったのは 私の友達、柚木 蒼佳(ユノキ ソウカ)さん。
出会った頃、"蒼佳"という字が読めなくて、
"アオカさん"って呼んでしまい恥ずかしい思いをした。
その呼び方が気に入ったのか、『アオさんって呼んで』と言われて定着した。
「アオさん久しぶり。どうして、このタイミング?」
向いに座って、メニューを取ろうとしているアオさんに尋ねる。
「今度、今度って言ってさ、先延ばしになっちゃってたからね。
やっと一段落着いたから、来週からまた忙しくなるしね~。」
今回の待ち合わせ、本当に突然って訳でも無かった。
1人暮らしする前に会った時から、暫く時間が経ってメッセージで口約束はしていた。
それも実現しなくて、この前連絡したんだ。
仕事柄、一定期間だけ思う様に休めないんだけどね。
「でも、朝から電話は止めて欲しい。」
あの時の焦り様って言ったら、凄かった。
遅刻した時に感じる罪悪感が真っ先に来て、謝り倒す覚悟まで決めたくらいだった。
私が電話を苦手にしているから、緊急以外は大体の人がメッセージを連絡手段にする。
だから電話が掛かって来ると、遅刻したと勘違いしてしまうんだ。
……ディスプレイを確認して落ち着いたんだから
「ごめんって。文字打つの面倒だったから…。」
少し拗ね気味の私に、耳に髪を掛けがらアオさんが言う。