「それは良いとして。
愛海、本題の"話"を聞いていい?」
最初から気になってはいたが、すぐに話さなかったのは愛海なりの気遣いなんだろう。
敢えて、気付いていない振りをする。
「そうだった。 あんまりね、
咲にとってはいい話じゃないと思うの。
勿論、私としてもあまり良い気はしない。」
ずっと、そうだった。
愛海はいつ・どんな時でも話合いを必要とする時は、話の良し悪し、大小を関係なく宣言した。
感情的になり過ぎて話し合いにならない事を避け、悪い話の時には相手に聞く覚悟を持たせる。
気配りが出来て、優しい所が愛海の長所なんだ。
変わってないなぁ、ホントに。
「うん、愛海が考えて必要と思ったなら話して。
どんな嫌な話でも、愛海の意見として受け入れるから。」
そう、これも。
3人で居る時も、こうやってバランスをとっていた。
意見が分かれて誰かが我慢するよりも、
ちゃんと話してそれが全員納得のいく話にする。
それだけが"絶対"だった。
「ありがとう。
その話なんだけど…。」
愛海の表情が曇る。
凄く言い辛い事なんだろう。
「いいよ、ゆっくりで。
急がなくても暫くこっちにいるし」
愛海が頷くのを確認してから、
お菓子を取ってくるね、と席を立った。