「…俺は!」

「イヤッ!」



倉持くんはあたしの肩を掴んだ。
あたしは咄嗟に振り払った。
…あのときの記憶が蘇ってしまうから。



「ご、ごめん!脅かすつもりはなかったんだ!」

「…ごめんなさい。あたしはもうこれで…」



あたしはこの場から去ろうとした。
また触れられたら身体がもたない。



「待って…!好きなんだ!!」



あたしは歩みを止めた。
…ほらね。
やっぱり嫌な予感は的中した。



「嘘なんかじゃない!俺はずっと花咲さんのこと気になってたんだ!」

「…」

「花咲さんに俺のバスケ姿見て欲しい。俺のこと少しでもいいから考えてくれないかな…?」

「…ごめんなさい」

「えっ…」



あたしは振り返らずに屋上を出た。
倉持くんがどんな顔をしていたかは分からない。
でも、そんなことあたしにはどうでもいい。
とりあえず離れたかった。
あの空間から…



あたしは走って音羽が待つ教室へ向かった。