「…俺の母親は夜の仕事をしてた。毎晩夜中に帰って来て、家事なんて一度もしなかった」



天城くんは急に自分の話をし始めた。
あたしは黙って聞くことにした。



「親父は仕事があるのに俺の世話をするために早く帰って来た。でも、そんな生活が長続きするわけなかった。すぐに離婚したよ。俺がまだガキの頃に…」



あたしは顔を上げて、天城くんの方を見た。
天城くんは悲しい顔をしていた。



「それから俺が学校行くようになってわかった。女は男を顔で選んでる。俺のことなんか大して知りもしないくせに告白してきた。…あり得ねぇだろ」



…そうだったんだ。
天城くんも色々あったんだ。
…最低なんて思っちゃった。



「…だから俺は恋愛なんてしない。恋愛したっていいことねぇだろ」



…あたしの少し似てるかも。
あたしも恋愛なんてもうしたくないって思ってた。
…なんだか安心した。

あたしは天城くんの袖を掴んだ。



「…ありがと、話してくれて…」

「お前こそ…こんなこと誰にも話したことなかったのにな…」

「あたしも…」



あたしたちは6限もサボった。
このとき二人は何かを感じた。
…二人だけの秘密だった。