あたしは天城くんから目を逸らす。
身体が震えた。



「…お前、昔なんかあっただろ」

「え…」

「俺だけの問題じゃねぇんだろ?」

「あなたには関係ないでしょ」

「あぁ、関係ねぇよ。でも、同じ家で暮らしてる奴に避けられると気分悪いんだよ」

「それは…」



あたしは胸が苦しくなった。
あのことは誰にも話したことがないから…



「…まぁとりあえず身体休めろよ」



そう言って、天城くんは立ち上がり保健室を出ようとした。
あたしは何故かこのとき、天城くんが行って欲しくないと思った。
…理由はわからない。



「怖いの…!」

「え?」

「天城くんみたいな男の人が怖いの…」



あたしはあのときのことを思い出していた。
…ずっと誰かに打ち明けたいと思ってた。
でも、できなくて一人で抱え込んでた。



「…あたし、中学のときに彼氏がいたの。でも、何人もの女子と浮気してた」



それがあたしの人生を乱したきっかけだった。