昼休み。
あたしは音羽と廊下を歩いていた。
一緒に昼食を食べる予定。

そのときだった。



「きゃー!天城くーん!」

「カッコいいー!こっち向いて〜!」



隣の教室からアイツが出てきた。
相変わらず女子に囲まれて、愛想振舞っていた。
…みんな騙されているとも知らずに。



「天城くん、カッコいいなぁ」

「あたしには理解できない」



そう言ったときだった。
目が合ってしまった。
でも、あたしはすぐに目を逸らした。



「…行こ」

「…あっ、愛衣!?」



あたしは音羽の手を取って歩き出した。



「花咲」



名前を呼ばれ、足が止まる。



「お前…」

「あたしは用がないから」



アイツの言葉を遮り、また歩き出す。
…顔も見ずに。
しかし、突然腕を掴まれた。
その瞬間、心臓が痛くなった。



「こっち見ろ」

「イヤ!離して!!」

「愛衣…?」



あたしは咄嗟に手を振り払い、大声を出してしまった。



「…ごめんなさい」



あたしは謝ってから、走って教室に戻った。
…最悪だ。