それから二人が席を外した隙に店を出た。
お母さんと直哉さんはあたしたちを見て不審に思ったかもしれない。
家に戻り、部屋に行こうとした。
そのとき、前には天城くんがいた。
「天城くん」
「家ではその呼び方やめろ」
「えっ?」
「柊でいい」
「でも…」
「学校ではそれでいいから」
「…うん」
「…愛衣だっけ?なんか用?」
「う、うん。…さっきは、ありがとう」
男の人に名前で呼ばれるのは慣れてない。
なんだか変な感じ。
「…別に。バレたらこっちも困るからな」
「え、じゃあ自分のためにやったの?」
「当たり前だろ。何で俺がお前のために身を張らなきゃなんねぇんだよ」
…コイツほんと最低。
…少しでもいい奴かもって思ったあたしがバカだった。
あたしはそう思ったら怒りが込み上げてきた。
そして、気づいたらコイツの頬を叩いていた。
「痛ぇ…何すんだよ」
「あんたの顔なんか二度と見たくない!!」
あたしは部屋に勢いよく入った。
そしてベッドへダイブ。
…コイツと一緒にいたら、昔の彼を思い出しそうで怖い。
あたしの身体は震えていた。