あたしは天城くんの方を見た。
すると、天城くんと目が合ってしまった。
あたしはすぐに逸らす。
そして、しばらくの間沈黙が続いた。
…早く帰りたい。



沈黙を先に破ったのは天城くんだった。



「…お前、ほんとに賛成だったのか?」

「…あたしの意見は別にいいの。お母さんが幸せになってくれればそれでいい」

「そうか…」

「…なんであたしのこと知ってるの?」

「…よく竜貴がお前のこと話してたから」

「竜貴…?」

「俺のダチみたいなもん。お前有名みたいだな」

「何言ってんの、それは天城くんの方でしょ?」

「そんなことどうでもいい」

「…なんか、想像してた天城くんとは大分違うかも」



あたしが思ってた天城くんは、優しくて、いつもニコニコしてて、王子様的な存在。
あたしはそうは思わないけど、音羽によく聞かされてたから。
でも、今目の前にいる天城くんは冷たくて、無愛想で、他人のことは興味ないった感じ。



「…そうかもな。でもこれが本当の俺だから」

「えっ?…じゃあ、作ってたってこと?」

「あぁ。疲れるけどな」



なんでそんなことしてるの…?
あたしには理解できない…



「どうして…?」

「その方が周りが楽だろ。素を出した方が面倒くせぇ」

「なにそれ…」



こいつ、変だよ…
それじゃあ、本気で天城くんのこと好きな女子たちの気持ちはどうなるの?
女子たちを騙してたってこと…?
音羽のことも…?



「つーか、お前俺のこと嫌いだろ?」

「…最低」

「は?」



あたしは怒りが収まらなかった。
だって、ヒドいでしょ!
人の気持ちを持て余して何が面白いの!?
こういう男がいるからあたしは…!
こういう奴、一番大嫌い…!!