教室へ向かった。



「よぉ!柊!」

「あぁ、竜貴か」

「悪かったな、俺で!」

「別に」

「ってか、お前また女子の告白断ったんだって?」

「情報早いな」

「その子泣いてたらしいぜ?少しは考えてやれよ!」

「別に」

「ったく、モテる男は違うなー!」



皮肉か。
…まぁ、いい。
東 竜貴は一応長い付き合いだ。
俺とは正反対の性格で熱苦しくて、バカで、正直者。
俺よりずっといい奴だ。



「…お!花咲じゃん!」

「花咲…?」


竜貴は前にいる女を見て、俺に耳打ちしてきた。
誰だよ、花咲って。



「知らねぇの!?花咲 愛衣。美人で、優しくて、清楚な感じが完璧だよなぁ!」

「知らないな」



俺は教室に入った。
竜貴は俺の反応に驚いた様子。



「お前、全く興味がないって感じだな」

「まぁな」



竜貴は呆れた顔で俺を見る。



俺の本性を知っているのはこいつだけ。
…いや、こいつの知らない俺もまだいる。
結局は、俺の素顔は誰も見たことがない。