「そうやって、いつも黙って誤魔化すなんて卑怯な人間のやることやで!? やましいことが無いんやったら、堂々と言えばええやないか!」
怒りを露に怒鳴りつけるが、大神は口を開かない。
「……そうか、あくまでも何も言わへんつもりなんか。それならええわ。ウチ、もう大神くんのことを一切信用せえへんから」
プイッとそっぽを向くと、鈴は席に戻った。
「……へえ。そうやって橘は気に入らない人間はとことん信じず、親しい人間には無条件の信頼をおくのか」
ずっと黙っていた大神が口を開き、黒斗と鈴が彼の顔を見た。
口元は楽しそうに歪められているのに、目は全く笑っていない。
「ねえ、橘は僕の何処を怪しいと思ってるの? 何処を信用できないの?」
「それは……何を訊いても、ちゃんと答えへん所とか……」
「何も言わないから怪しい、か。でも、それは君の友達だって同じじゃないか」
大神の赤い瞳が、怪しく輝く。
「君の友達も何も言わないだけで、裏では何をしてるか、隠しているか分かったもんじゃない。本当は……何度も弱者を暴行して金を奪っているかもしれない。人の罪を隠蔽(いんぺい)しているかもしれない。本当は……」
チラリと黒斗を見やる。
「人の皮を被った死神かもしれない」
「……………………」
大神の言葉に黒斗は何も答えず、ただ睨みつけるだけだ。