「ひ、ひあ……」
恐怖のあまり固まってしまう玲二。
「や、だっ、助けてえ!」
小野寺ではない男の声が聞こえて我に返ると、先ほど小野寺を止めようとした男子生徒が、床についた両膝を引きずりながら逃げようとしている。
「っ、今、行くよ!」
錯乱している小野寺の側に居ては、危害を加えられるかもしれない。
そう思った玲二は震える己の足を叱咤(しった)しながら、男子生徒の元に駆け寄り、肩に手を回して移動させる。
グシュ、グチュグチュ
嫌な音が聞こえて反射的に振り向く玲二。
その目に映ったのは、ハサミを右目に刺し込む小野寺の姿。
「げへ、へへげっ」
ズチュルッ
ハサミを引き抜くと同時に、ドロリとした血が吹き出し、赤黒く染まった刃先には血濡れた丸い球が突き刺さっていた。
そのまま小野寺は糸が切れた人形のように崩れ落ち、ビクビクと痙攣(けいれん)を繰り返した後、動かなくなった。
額と両目から流れる血と、口から漏れる黄色い胃液が床に染みを作っていく。
抉り取られた右目部分には、ポッカリと赤黒い穴が開いており、そこからドクドクと血が流れている。
「………………」
それを見た玲二と男子生徒は、 ただ立ち尽くすしかなかった。