如月高校 職員室



(……ダルい……)


何とか学校に辿り着いた小野寺だが、自分の席に座るなり机に突っ伏した。


(……コーヒー飲んでから気持ち悪い……)

実は小野寺は、周囲には秘密に付き合っている恋人が居る。

今朝、その恋人から貰ったインスタントコーヒーを飲んだのだが、それから具合が悪くなった。

吐き気がするし、頭もボーッとして目眩がする。


体調不良なら休めばいいのに、何故か小野寺は「大丈夫だろう」と根拠の無い自身に満ちていた。



「小野寺先生、大丈夫ですか?」

声をかけられて顔を上げると、心配そうに見つめてくる佐々木の姿があった。


「顔色悪いですよ? 保健室に行かれた方が宜しいのでは……」

「大丈夫ですよ。しばらくすれば治ります」

「でも……」


なかなか引かない佐々木に、小野寺は舌打ちをする。

「大丈夫ですってば。親子そろって心配性ですね」

やや嫌みな言い方になってしまったが、小野寺は佐々木に悪いとは思わなかった。


「……はあ。辛かったら本当、ご無理なさらずに」

大丈夫だと言い切られては佐々木もこれ以上何も言えず、席に戻る。



(……今日の小野寺先生、変ね……いつも、あんなキツイ言い方しない、物腰柔らかな人なのに……)



佐々木が不思議そうに見つめるなか、小野寺は再び机に突っ伏した。