鈴の歩幅に合わせて進んでいくと、前方に同じように腹を押さえて歩く女性の姿が見えた。
「あっ、小野寺先生だ! おはよーございまーす!!」
玲二がブンブンと手を振りながら駆け寄ると、小野寺はゆっくりと振り向いた。
「あら佐々木くん……おはよ」
「うわわっ! 先生どうしたんですか!? 死にそうな顔して!」
玲二がビシッと指差した小野寺の顔は、確かに悪い。
冷や汗が流れていて、顔色も青く、目は充血している。
「んー……食あたりかしらね。朝ごはん食べてから調子が悪くて……」
艶やかな短い赤茶色の髪を撫でながら小野寺が言った。
「調子が悪いなら休めば良かったのにー」
「大丈夫よ、ありがとね佐々木くん」
それだけ言うと小野寺は踵を返し、フラフラと先に行ってしまった。
「アイツが小野寺か……様子がおかしくなかったか?」
玲二の元に辿り着いた黒斗が疑問を口にする。
「んー、食あたりだって。鈴ちゃんと同じだね」
軽い調子で笑う玲二だが、黒斗は訝しげな表情のままだった。