翌日の朝


「……う~……」

学校へ向かう道を、鈴が苦しそうに腹部の辺りを押さえながら歩く。


「鈴ちゃん大丈夫?」

「ほっとけ。ただの食いすぎだ」

心配そうな玲二に、黒斗は無関心な様子で言った。


「ちょ……クロちゃん、それが弱っとる女の子に言う言葉なん?」

「弱ってるのは自業自得だろう。昨日、俺はちゃんと止めた」


鈴の不調の原因――それは胃もたれである。

昨日の恵太郎の誕生日パーティーで出された肉のフルコースを調子にのって食べ過ぎてしまったのだ。

黒斗が言ってる通り、彼は鈴に「胃がもたれるぞ」と警告したのだが「大丈夫」と言って聞かなかったのだ。



「だって美味しかったんやもん……うぷっ」

今度は口を押さえる鈴。

そんな彼女の様子に、玲二が腕を組み、考えているような素振りで喋りだす。


「オレが思うには、鈴ちゃんは胃の鍛え方が足りないんだよ。オレみたいに頑丈な胃袋を持たないと、食事を完全に楽しめないよ! まずは、朝食を食パン4枚、コーヒー1杯に天然水をコップ3杯、味噌汁を大盛り2杯にご飯を大盛り3杯に増やすんだ! 胃が鍛えられ……」


バシン


言い終わる前に黒斗が容赦なく玲二の頭を叩いた。

「黙ってろ。お前の胃袋は頑丈というより化け物じみてんだよ」

「えー、そうなの? でも晩ごはんはもっと……」

「レイちゃん、悪いけど今は言わんといて……更に……気持ち悪く……ウプ……」


いつもなら、もっとノリよく会話に混じる鈴だが、よっぽど重症のようだ。