「そういえば、鈴ちゃんと黒斗くんは如月高校に通ってるんだろ?」

「はい、そうですよ」

「じゃあ、小野寺 詩織(おのでら しおり)っていう女の先生を知らないかな?」


伸也の言葉に、鈴があごに手を当てて思考する。

数秒の間があった後、思い出したようにパンッと手を合わせて頷いた。


「知ってます! 小野寺先生、確か1年生の数学教師やった筈です」

笑顔で言った後、鈴は首を傾げた。


「……あれ? 何で伸也さん、小野寺先生のこと知っとるんですか?」

「ああ、僕と小野寺さんは高校生の時の同級生だからね」

「へえー」


鈴が相槌(あいづち)を打つと、伸也は更に続けた。

「小野寺さんには色々と親切にしてもらってたんだ。高校を卒業して、彼女が大学に通った後は疎遠(そえん)になってしまったんだけどね。そうか、小野寺さんは元気にしてるんだね」

安心したように、うんうんと頷く伸也。

そんな彼の様子を見て、鈴がニヤリと笑った。

「もしかして伸也さん、小野寺先生のこと……」

「ハハハ! そんなんじゃないって!」

「えー、ホンマですか?」

笑いあう鈴と伸也。


恵太郎は我関せずといった様子でステーキを頬張り、黒斗は黙ったまま伸也を見つめていた――。