「いえ、大丈夫です。まるでダメって訳では無いので」
「そう? 無理して食べなくてもいいからね」
紳士的に笑う伸也に黒斗が頭を下げると、鈴が声をかけてきた。
「な? 伸也さん、エエ人やろ?」
「……ああ。弟と違ってな」
「うるせえ! このネクラ!」
「……俺はネクラじゃない。クールとネクラの違いも分からないのか?」
互いに睨み合う黒斗と恵太郎。
2人の視線がぶつかる場所には火花が散っていそうな迫力だ。
祝いの場でありながらケンカを始めそうな2人の様子を、鈴は「またか」と呆れながら見つめ、母親と父親に至っては食事に夢中で全く気にしていない。
「コラ、2人共。皆で楽しくご飯を食べている時にケンカしちゃダメだろ」
一番の良識人である伸也が注意を促すと、渋々黒斗と恵太郎は目線を外した。
「フフッ、さすがのクロちゃんとケイちゃんも伸也さんには形無しやな」
そう言って笑う鈴。
対して黒斗と恵太郎は未だに不満そうな顔だ。