(……元の姿は良かったんだろうな。竹長も顔は悪くないし)



同じ人間でも体格によって印象や外面が全く異なる。

伸也は太っていたせいで見栄えが悪かったのだろう。

つまり、恵太郎達の両親も痩せれば美形・美女の可能性は高い。

まあ、この夫婦は例えそうだとしても、汚い歯垢、度を越えた厚化粧などが台無しにしてしまうだろうが。



「それじゃあ、全員揃ったことだし……恵太郎ちゃん、誕生日おめでと! かんぱ~い!」

母親がウイスキーの入ったグラスを掲げて音頭をとると、全員がコップを掲げ、「おめでとう」と祝いの言葉を口にした。


「いただきます!!」


食事が始まると同時に、父親がスペアリブに食い付いた。


口回りをソースで汚し、人目を憚(はばか)らない豪快かつ野性的な食いっぷりに黒斗は目を逸らす。


逸らした先のテーブルにあるのは肉、肉、肉――。


ちなみにバースデーケーキの代わりに、レモンステーキにロウソクが刺さっている。


肉料理を好まない黒斗にとっては、悪夢のような光景だった。

しかし一口も食べないのは失礼なので、仕方なく豚カツを受け皿に入れる。


「黒斗くん大丈夫? 肉、苦手なんじゃない?」

そんな彼の様子を察したのか、伸也が気遣うような目を向けてきた。