「恵太郎ちゃん達、準備が出来たから降りてらっしゃいねえー」
「はーい」
2階までハッキリと聞こえる母親の声に恵太郎は返事すると、傍らに置いてあった松葉づえを使って立ち上がった。
「ケイちゃん大丈夫?」
「平気だって。慣れたしな」
松葉づえを使う恵太郎と共に、黒斗と鈴は階段を下って食堂に向かった。
「ほら、座って座って!」
母親に促されて、黒斗達3人は席に着く。
ゴトッ
大きな音を立てて、四角いテーブルに置かれたのは巨大なスペアリブ。
他に並んでいるのはレモンステーキ、焼き肉の盛り合わせ、牛丼、豚カツ等――とにかく肉料理のオンパレードである。
(うっ、ぷ……)
見てるだけで胸焼けしそうな油ぎった料理の数々に、思わず黒斗と鈴はうつむいて視線を逸らす。
一方、恵太郎は毎度のことなので特に反応は無く、父親に至ってはヨダレを垂らしながら喜んでいる。
「えーっと、これで皆揃ったかしら?」
「お袋、兄ちゃんが居ないぞ」
「伸也ちゃん、まだ帰ってないの?」
「ただいまー!」
玄関から爽やかな声が響き、数秒の間を置いて食堂の扉が開かれた。
「…………なっ」
現れた恵太郎の兄の姿に、黒斗は言葉を失った。