「迷いが吹っ切れたような顔してるな。」

「まぁ…そうですかね…。」

「あがいてみたんだな。」

「見事に散りましたけどね…。手を伸ばしても届かないと思っていたものに手を伸ばして、捕まえたと思ったら大事なものを傷付けて…。結局、何一つ残してやれなかった…。」

ヒロは手を伸ばして、リュウトの頭をクシャクシャと撫でた。

「人間な、生きてりゃいろんな事があるよ。傷付いた事より傷付けた事を悔やむ事ができるなら、オマエもひとつ大人になったって事さ。」

この人はどうして、何も話さなくてもわかるのだろうと、リュウトは不思議に思う。