ほんの少し、腕を掴んで引き寄せただけだ。

それなのに、腕の中に残る彼女の体の小ささや手のひらに残る柔らかい感触が、リュウトの心を捕らえて離さない。

(なんだコレ…。ガキか、オレは?!)

家に着くまでの道のり、リュウトは不可解な自分の感情を打ち消そうと、何度も自分を戒めた。

(アイツは彼氏もいるし…オレの事なんて友達としか思ってないんだ…。)

何度も心で同じ言葉をくり返すのに湧き上がる感情を、どうにか抑えてしまおうと、リュウトはそのすべてを否定した。

(第一、オレが誰かを好きになるなんて、あり得ない…。)