ケンが恋愛対象…もうダメ、想像しただけでも笑っちゃう。
ケンに限っては、絶対ない。
弟みたいなもんだし、そもそもケンが私のことを、ただバイトが一緒の人くらいしか思ってないだろうし。
ケンと私じゃ、なんていうか住んでる世界が違いすぎる。
これじゃあ、ケンに失礼だ。
「飛鳥って、自分の可愛さ全然わかってない…」
「え?何?」
「ううん、何でもない。……あ、もうこんな時間!ごめん飛鳥、すごく長い間付き合わせちゃった。」
「あ、うん。大丈夫だよ。」
「本当にありがとうね、すごく楽になった。翔と向き合う勇気も出た。」
「それならよかった。あとは、頑張ってね。」
うん、と頷くちはるの顔は、すごく晴れていた。
「わ、ひどい顔。明日は目パンパンだなぁ。」なんて笑ってたけれど。
そのままちはるが会計をして、外へ出た。
「ありがとう、ごちそうさま。」
「ううん、こちらこそ本当にありがとね、また連絡する。」
すっかり冷え切った夜、私とちはるはそのまま別れた。