「私はね、なんだかちはるがすごく大人びて見えるよ。」
「え、そう…?」
「うん。私なんて店長と会えるだけで幸せって感じちゃうし、一緒にお仕事したり、お話しするだけでなんか胸いっぱいっていうかさ…。子どもだなって思うよ。」
「あはは、何言ってるの。そのピュアなところが飛鳥のいいところ!私こそそんな気持ちが持てる飛鳥が羨ましいよ。」
ちはるはもうすっかり冷めたコーヒーを飲んだ。
ピュア…かぁ。
私は今までこの20年、ろくに恋をしたことがなかったと思う。
過去に恋愛でのトラウマがあるとか、男性恐怖症であるとか、そういうのでは全くないんだ。
ただいい人が周りにいなかったというか、同級生の男子たちは、すごく幼稚だなって思ってた。
だからいいなって思うのは、いつも学校の先生とか、お店の店員さんとか昔から〝大人〟だった。
ちはるはピュアなんて言うし、私も口では自分が子供だと言うけれど、本当はどこか変に大人びているんだと思う。
好きとか、キュンキュンするとか、あまりそういう感情は求めていなかった。
自分のことを支えてくれるような、一緒にいて落ち着くような、そんな人を求めていた。
だから店長は、私の求めていた人だった。
もちろん、店長といると、ドキドキはするしそういう甘い気持ちにはなる。
でもそれ以上に、〝大人〟を感じる。
仕事が出来て、私が困っているときに、絶妙なタイミングで手を差し伸べてくれる。
私をいつもどこかで支えてくれるような気がするんだ。
だから私は、そんな店長に惹かれている。