「私、翔にひどいことばかり言っちゃった。違うってこと分かってるのに、翔がそんな人じゃないってこと分かってるのに…。ただただ感情に任せて、翔のこと傷つけた。」


「うん…」


ハンカチで目元を押さえながら、途切れ途切れに話すちはる。


こんなちはる、初めて見た。



「翔にね…ずっと言い寄ってた女の子がいたの。大学の同じ学科の子らしくてさ。きっかけはその学科の飲み会みたい。

彼女いるって知ってるのに、その子かなりしつこくて。

まぁ翔の性格上、きつく断れないっていうか、優しいからあいつ。隙があったんだと思う。

私もそのことは前から知ってて、もちろんいい気はしなかったけれど…飲み会行かないでとか翔を縛るようなことあんまり言いたくないし。

翔のこと信じてたからさ、大丈夫って。

そしたらこの間、もう大丈夫だって、その子に彼氏が出来たから心配ないって。そう言って来たの。」


「そう…」


またしばらく、ちはるは口を閉じた。


カランカランとお店のドアが開く音が聞こえた。



「でもね…おととい翔とその子、二人で会ってたの。」


「え…」


「知り合いががたまたま、夜、駅前のタワーのところで見たの。

その子が翔に抱き付いているところ。」


「うそ…」


「もう私、わけ分かんなくなっちゃってさ。今までこんなこと、もちろん無かったし。でも色々信じれなくなっちゃって。」


ポロポロと涙をこぼすちはる。


私はただただ胸が痛かった。