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まさかのハプニングにより一時中止。


けど、マナミ先輩と約束ができたし、収穫大。


しかも、タイミングよくいつの間にかゲリラライブも終わっていて、人の流れも普通に戻ってきていた。



あたし的には、満足だ。


さてさて。問題はここからだ。


目の前にはキャップとだて眼鏡をした志貴先輩と睨んでいるはるるん。


「おひさー、はるるん」


とにかく面倒だし、明るくいっとこー。


「美沙ちゃん達、なんでいんの」


やだやだ睨まないでちょうだいよ。


「先輩とデートですけど」


あたしは志貴先輩の腕にしがみついた。


…が、すぐに振り払われた。


うん。別にもう傷つかないもんね。耐性出来ちゃってるもんね。


「はるるんさー、どんだけ女癖悪いのさー美沙ちゃんビックリしちゃったー」


「…………」




「ねぇはるるん。あたし、はるるんを助けたい」





ドストレートにそう告げる。


はるるんは肩を少し揺らしてから、あたしを見据える。


何その目。何でそんな目なの。


はるるんは何でそんな冷たい目をしているの。


「やってみせてよ」


彼は妖しく笑った。


その姿がマナミ先輩と少し被る。


大人の余裕って奴か。つくづくムカつく年上共だ。


「志貴先輩、行きましょっか」


「………分かった」


あたしは駅の方に踵を返す。


「はーるるん、」


そう緩く彼の名前を呼びながら、振り返ると複雑そうに顔を歪めた彼の顔が見えた。


「大好きだよーーー」


それだけを伝えて、あたしと志貴先輩は駅の中に入った。


「はるるんがここから立ち去るまで待機です」


少し入ったところで足を止めて、そう言った。


「…………」


志貴先輩はあたしを睨みつける。


「何ですか?」


「なんであんなこと言った?」


「んー、気分?直感?」


「晴を助けたいじゃねぇのかよ」


「助けたいよ」


とても助けたいよ。


今から手を差し伸ばしてあげたいよ。


けどさ、さっきの場面は違う気がする。


はるるんの過去が引き起こした、ただの自業自得じゃん。


「あたしは優しさと甘さは違うと思うよ」


あたしがあの時マナミ先輩を怒鳴ったとしたら。


それははるるんを助けたいという優しさじゃなくて、たたの甘さだと思う。