「ねぇハルくん」
声質が変わった彼女。
本題に入る。と悟ったあたしは、無意識に口角を上げていた。
「何でこんなに女の子達と遊んでるの?」
「さぁ?」
「なんかさー私にもそういう時期があったんだけど、なんか虚しかったなぁ」
え、マジで?マナミ先輩、初耳なんですけど。
「マナミちゃんは何で俺を誘ったわけ?」
そりゃあ、ねぇ…あたしのせいだね。
「久しぶりにやりたくなっただけ」
さすがマナミ先輩!笑顔でさらりと嘘を言ってのけた。
「そうだ、よくハルくんと一緒にいた女の子は?」
「あの子は志貴一筋よー。若干怪しいけど」
まだ疑ってんのかよ。
「その子とは体の関係はないわけなの?」
「まーねー」
「珍しいね、そういう子」
「うん。とってもいい子だよ、あの子は」
はるるん。
今いい子って言ったよね。
嬉しい。
はるるんはあたしを認めてくれていた。
はるるん。あたしは50センチくらい見直したよ。
「ねぇハルくん。何かあったの?」
マナミ先輩は核心つく一言を放った。
あぁ、はるるんの表情が分かんない。
座る席は指定させといた方が良かったか。
あーあ。やらかしちゃった。
別にいいけど。
「…何もないけど」
「ねぇハルくん。あたしね、昨日少し遠いんだけどね、隣町の松本病院に行ったの」
マナミ先輩。あなたは、何を言いたいの?
あたしはこんなの頼んでない。
はるるんの性癖の理由を聞きたかっただけなのに。
マナミ先輩、あんたは何でそんな、
「そしたらね、朝霧双葉っていうハルくんに似た可愛い子見ちゃったんだー」
はるるんを傷つけるようなことを言うの。
妹とかいたとか知らなかったけど。
あたしに言わないくらいだし、なんか大変なんでしょ?
あぁもう。
志貴先輩も顔を苦しそうに歪めたじゃん。
絶対、妹がはるるんのアウトゾーン、かつはるるんの性癖のキーポイントじゃん。
「志貴先輩、予定変更です。はるるん救出大作戦をしましょうか」
ちょいと優季クンにこりゃお説教だ。
明かな人選ミスだよ、これ。
「志貴先輩、はるるんを連れ出して。あたしはマナミ先輩とお話しときます」
「分かった」
代金は後払いでいいや。うん。
お金払わないでやったって、明日払えばいいようには交渉してあるし。
「では、出撃!」
あたしの合図と共に志貴先輩も立ち上がる。
これで志貴先輩は正式な美沙隊の隊員だね。
そんなことを思いながら立つと、立ち上がった拍子であたしのパーカーのフードが取れる。