優季はあたしの魚の骨を取るのに必死になっている。
すんごいね。多分そこまで骨気にする子はいないと思うよ。
「ところで優季クン」
「なんだい美沙チャン」
「忍さん何か言ってた?」
「親父は、……」
何故に詰まるの。
何焦らしてんの?
何々最近は焦らしプレイが流行ってんの?
もうもう最近の子はー。大人のプレイにそこまでマネしちゃうなんて。
おっかないねぇー。
「隠しても無駄だってー、どーせ美沙ちゃんは天才だから察しちゃうよ?……いでっ」
「自分で自分で天才とか言うな自意識過剰」
「…………」
何か失礼な奴。
あたしはぷいっと拗ねて、骨が取れた魚の身を箸で刺して、口に入れた。
「親父は、……お前が」
「……うん、あたしが何?」
優季は言いにくそうに顔を歪ます。
こんな顔させたいわけじゃないんだけどなぁ。
もともと分かっていた事じゃん。
優季だって割り切ってくれてるんでしょ?
今さら、そんな顔されても遅い。
そんな顔されても、あたしはどんな反応をすればいいの?
悲しい顔?嬉しい顔?怒った顔?
分からない。
どうすればいいか分からない。
───ワ カ ラ ナ イ 。
経験不足ってヤツ?
経験値が足りないって事じゃん。
こりゃラスボス戦は程遠いよね、うん。
もちろんラスボスは志貴先輩ね。
「お前さ、戻る気ねぇの?」
「優季、口悪い。戻る気ないの?、でしょ?」
「……戻る気ないのか?」
ちっ。地味に言葉変えやがった。
ムカつく奴だ。
「何処に?」
優季がムカつく奴なら、あたしは最高に性格が悪い奴だよ。
知ってて聞いてる。
確信犯。それほど悪どい奴はいない。
「…………親父から伝言」
何吹っ切れたみたいに言ってんの。
まぁ、用件が聞けるなら別にいいや。
あたしは優季の言葉に耳を傾けながら、魚を食べる。
さすが和食。
日本人は和食に限る。
……なんちゃって。