「見捨てろっつー意味じゃねぇよ」


じゃあ、どういう意味なんだ。


「晴はお前には危険だ」


何が言いたい。


「はるるんは危険じゃない」





──『自意識過剰だねー。ってか、俺には敬語じゃないの?俺、先輩だけど』




目を瞑れば、思い出す彼。


あたしの記憶の彼はいつもヘラヘラしてて、軽くって、他人になろうとか少し意地悪な一面もあるけど、ベストフレンドだ。





───『美沙ちゃん。“朝霧晴”に深入りは禁物。足を掬われるのは彼じゃなくて自分自身』




さくらさんも、志貴先輩も、何がはるるんの脅威だと思っているの。


ゆるゆるなあのミルクティーのどこが怖いというの。


「ねぇ志貴先輩」


確認させてちょうだい。


「………」


「助けたい、とは思っているんですよね?」


「……あぁ」



そう答えた彼の目は、遠くを写しているような、そんな気がした。


「なら、限界まで試させてくださいよ」


「…………」


「あたしが出来る限界まで」


あたしは必死にするよ。


もうこのチャンスを逃したら、次はあたしにはないんだから。


なりふり構わず、はるるんに立ち向かうよ。


志貴先輩やさくらさん達とは決意が違うんだよ。


次がまだある。その機会を伺えばいい。


そう思ってるんでしょ?


あたしにはそんな生温いことするような時間も優しさもないんだ。


問答無用で、自分のペースに相手を無理矢理引きずり込む。


これがあたしのやり方。ポリシーである。


優季にやったように。


朝霧晴クン。無理矢理、あたしのペースに引きずり込んでやんよ。


自分でも不敵に笑ったと思った。


そして、最高に志貴先輩の顔が引きずったと思った。


「さて、先輩。」


あたしは彼の顔を見上げる。




「限界挑戦、のお手伝いお願いしますね?」





あたしは意地悪く笑ってみせた。