キッと彼を睨み付けると、彼はもっとシワを寄せてハイパー不機嫌顔に。
何故だ何故なのだ。
「先輩、先輩はクールを売りにしていたのに変態を売りにする気ですか。はるるんと同じ人種になりたいんですか。あたしは断固反対です。そうお母さんは断固反対ですよ!そういうお付き合いは大学生、…いや、大人になったらしなさいっ!」
「…………………」
「………えっ、……と……………とにかく変態にならないで?」
「…何故疑問系」
「…わ、わからんっ……………」
場の空気が崩れた。崩壊した気がした。
どんだけあたしはシリアスに向いていないの。
キメたと思ったら、志貴先輩はボケをし出す始末。
到底向いてないと確信した。
だけど、助けたいの。
はるるんを、志貴先輩の親友を助けたいと思ってしまったの。
珍しいこともあるんだ。
あたしも随分と優しくなったよ。
ふっ、と自嘲して目尻を垂らした。
「志貴先輩。最近、はるるんどういう風に見えます?」
「…やたらと女のトコいるよな」
やっぱり分かっているんでしょう?
なら、何で助けないの。
親友なんでしょう?さくらさんが居なくなって、志貴先輩を一番心配してくれたのは、家族とはるるんなんでしょう?
なのに何で。
沸々と沸き上がる怒りを志貴先輩にぶつけようと、口を開く。
けれど、言葉は喉で詰まった。
「…お前、晴をどうこうしようとな思ってないよな」
それは、志貴先輩が呆れたような声で前触れもなく爆弾を落としたから。
「…それがどうしましたか?」
「晴に深入りするな」
どういう意味、それ。
「見捨てろっていいたいわけ?」
「敬語」
「見捨てろっていいたいわけ、…ですか?」
まさかここで敬語を指摘してくるとは。
侮りがたし槻倉志貴先輩。