****
「あのね、優季。諦めって大切だと思う」
「諦めなければ夢は叶う」
「………………」
現在のゲーム勝敗は42戦42勝。
あの人気ゲームのキャラクターのカーレースだ。
ほら、美しい髭を生やしている緑と赤のちっちゃいおじさんのヤツ。
あたしはどちらかというと、キノコクン派だけどね!
もちろん、全勝しているのだから、このゲームはあたしの私物である。
優季はゲームにあまり興味がないため、買わない主義らしい。
なんて勿体ない人生なのだろうか。
今日はどしゃ降りの雨。
雨に濡れたらゲームが壊れると思ったので、雨なのにふざけんなコノヤローとメールを送ったら、忍さん(優季ズ父)が大雨の中迎えに来てくれたのは記憶に新しい。
病院は?と聞くと、優季に『息子と病院どっちが大切?いつも病院ばっかりで俺、俺……』と言いながら目頭を押さえたらしく、彼は息子を優先させたらしい。
病院を優先させろや。
と言いたいところだが、あそこには医者一人いなくなったとしても補充は十分できるほど人材がいるので問題ないだろう。
「あのねー、あたし、このゲーム極めたのさー」
「だから何だ」
だから、あんたには勝てねぇってことだわバカ。
「マジで諦めて」
飽きた。何でエンドレスでしなきゃいけないの。
嫌いになりそうなんですよ。てか、もう嫌いになり始めてきている。
「無理だ」
はぁ、と彼に気付かれないように溜め息をついた。
「ん?お前、顔ちょっとやつれてないか?」
「あんたのせいでね」
なんなのコイツ。
もう嫌だ。