side.S




「藤嶋チャンと美沙ちゃんは別人だ。重ねるなよ」





俺の親友は静かに言い放った。


その言葉は確信ついたもので、俺はぐっと眉間にシワを寄せた。


アイツはさくらと似てる気がする。


何が似ているのか?と聞かれたら答えることなんて出来ないが。



彼女と出会ったのは入学式。


すぐ居なくなると思ったら、意外と一緒にいた。


5月、スマホが震えてメールをみると『美沙ちゃんでーす♡志貴先輩、登録よろぴく♡』なんてアドレス交換してないはずなのにメールが来てマジで無視ろうと決めたのに。


今では何だかんだで数十通に一度は一言はメールを返すようになってきた。


「晴、アレ好きになったっつーこと?」


「ちょーっと違うかなー」


彼は、苦笑いをした。


だろーな。


あんな変人好きになるとかチャレンジャーだと思う。


そうなると学校でまぁまぁの数の男がチャレンジャーになってしまうところだが。


左耳に手を持っていくと、冷たい金属に触れる。


さくら、さくら、さくら、さくら。


何で居なくなるんだよ。


何で教えてくれなかったんだよ。


何で俺は気付いてやれなかったんだよ。


ぎゅっと心臓を掴まれたような錯覚を覚える。


「志貴」


「……………」


俺は無言で彼に視線を向ける。


「藤嶋チャンが最後に言った言葉、…実現出来るといーね。きっと喜ぶよ」


思い出すのは真っ白なベットにぐったりと横たわる彼女との最後の記憶。











「…実現出来るわけねぇし」








ポツリ、溢れた本音はふわりと風にさらわれていった。