「志貴さー、美沙ちゃんを傷つけちゃダメだよ」
「…………」
彼は少し目を見開き、俺を見る。
何が意外だって?
それは、明白だ。
「びっくりしちゃった?俺が美沙ちゃん構うなんて」
「…………」
無言は肯定のうち、という言葉を思いだし、俺はふっと笑みを浮かべる。
「あの子、気に入っちゃったんだー」
俺が睨んでも、笑ってくるし。
俺が志貴との仲邪魔しよーとすると睨んでくるし。
俺が美沙ちゃんを探ってたら、普通面と向かって探るななんて言わないでしょ。
面白い。
初めて見た人種だ。
確かに美沙ちゃんと志貴、どちらが大切かと聞かれたら志貴と即答するだろう。
俺が心配しているのは志貴を傷付けられることであって、それは何としてでも阻止したい。
彼女と出会ったのは4月の終わりの頃。
あのときから1ヶ月。
色々と変わった。
志貴が美沙ちゃんのストーカーに慣れてきたり、普通に話したりしてたり、志貴も美沙ちゃんに対しての態度は変わった。
だから、ふと思ったんだ。
もしかして、美沙ちゃんが傷付けるんじゃなくて、志貴が美沙ちゃんを傷付けるんじゃないのか、と。
志貴は俺の大切な親友だけど、
「藤嶋チャンと美沙ちゃんは別人だ。重ねるなよ」
美沙ちゃんも俺の中ではかなり上位のお気に入りだ。