side. H
彼女の第一印象はとにかく“綺麗”だった。
藤嶋、…藤嶋さくらといい勝負だ。
でも、どちらかというと倉條美沙の方が断然綺麗だ。
あぁもう、ウチの親友の志貴チャンが羨ましいよ。
美人二人に求愛されちゃって。
俺なんて、いつも香水臭くてメイクの濃いオネエサマ方とヤってるだけだし。
あー、ここがダメなのかな。
誠実さが足りないのかな。
まぁどうでもいいや。
俺、どちらかというと情とかそんなんより快楽を得る方が得だと思ってるし。
別に現状に不満じゃないし。
俺は彼女がかけていった道をずっと見ている隣の親友を見る。
きらり、と彼のサクラのピアスが光に反射する。
「志貴先輩志貴先輩」
「……………」
ギロリ、彼に睨まれる。
やだなぁ俺の親友は。
ただちょっとだけ彼女のマネしただけじゃん。
あー、もしかして。
「志貴くん、が良かった?」
──『志貴くんがさー志貴って呼べって言ってきて、……恥ずかしくて言えないよっ!朝霧くんからも何か言ってくれないかな……』
「ぶっ殺されてぇの?」
「やだなぁ物騒ー」
ごめんってー。藤嶋チャンのマネして悪かったってー。
「なーんかさ、似てるよね、あの子」
分からないけど時々ダブる。
藤嶋チャンと美沙ちゃんが。
性格も、口調も、雰囲気も、仕草も、全然正反対なのに。
何故かダブってしまう。