「先輩、一緒に戻りましょ?」
「なら、メガホンを学校に持ってこないことを誓え」
何故に。
最近、思いついたナイスアイデアだったのに。
でも。まぁ、いっか。
今度はスピーカーの予定だし。
「いいですよ。だから、早く降りてきてください」
志貴先輩はじとーとあたしを見ながら、ゆっくりと桜の木を降りる。
何なんだい。その目は。
「あたしは嘘つきません」
「…………」
何々その信じれない目は。
「あたしたちの仲じゃないですか。信じてください」
「……一昨日(おととい)知り合ったばかりだろ」
そうなんです。
あたしたちは、一昨日ここで会ったばかり。
つまり、一昨日でこの扱い。
心が痛み過ぎて、カレーライスになりそうだ。
「…………実は、前世は運命の相手だったりして☆」
「キモい。死ね」
「ひゃー、怖い怖い。んな事言っていたらモテませんよ?」
「…どうでもいい」
彼は大きく吐息を吐き出して、ゆっくりと校舎に向かいだす。
ゆっくりとした足取りはまるでナマケモノのよう。
この人、絶対に授業出る気ないんですけど。
「早く歩きましょ?」
「るせーな。俺の歩くペースにケチつけんな」
マジで‼?
小学校並みだよコレ‼
あたしは、ぽんっと先輩の肩に手を置いた。
「先輩。色々苦労してきたんですね」
あたしは暖かい目で彼を見つめたのだ。
だってそうでしょう?
一方、先輩はゲッという表情を浮かべ、あたしの手をはたく。
「……………」
「……………………」
なんスか。この長い沈黙。
けど、その空気を壊したのは意外と先輩で。
「…………お前ヤダ」
という言葉だった。