ポケットからスマホを取りだし、ロックを解除する。
ちなみに暗証番号は02150410だ。
0215、2月15日はあたしの誕生日で。
0410、4月10日は志貴先輩の誕生日だ。
まぁそんなプライペーツな話は置いといて、あたしはさっき届いたメールを見る。
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from 橋本優季
20** 5月**日 17:26
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唐揚げ
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「知るかよそんなの」
「何一人で言ってんのよー」
はるるんが訝しげにあたしに視線を送る。
志貴先輩はぐっとあたしに顔を近めて、内容を見る。
近い近い近い近いっ!
これって進歩だよね。
「うへへへへ」
「きもい」
数センチ先で彼があたしを睨む。
あぁもう。すんごく最初から進歩したよ。
無視だったのにいつの間にかに話せるようになっちゃったよ。
「唐揚げ?…なんだそれ」
「あたしが聞きたい」
うん、とっても切実にそう思う。
「つーか、橋本優季って橋本病院の…」
「よく知ってるね先輩。優季は息子だよ、うん」
優季クン。君はどんだけ有名なんだよ。
けど、このメールを見られたせいで評判はガタ落ちだね。
ざーまーあー。
「えー、美沙ちゃん橋本優季クンとお友達なのー?」
「うん、まぁね。幼馴染み、的な?」
へぇ、とはるるんは不敵に笑う。
あー、もうなんなの。
絶対、あたしを志貴先輩から離すための作戦練ってるでしょ。
もう、ホントはるるんって最低なヤツ。
「まぁとにかく。もうあたし、帰るね」
「え、なんで?」
「え?」
あたしの言葉に一番に反応したのは意外とはるるん。
いつもあたしが帰ると言ったら、嬉しそうに顔を地味に綻ばせてるのに。
何?いいキャラ作り?
ふん。美沙ちゃんはもうはるるんの本性見定めたから騙されないよーだ。
ふっと小さく笑みを溢すと、近くにいた不思議そうに見る先輩が視界に入る。
「お前、帰んの?」
「え、…うん、はい…………」
え、何。二人して。
もしかして、あたしを陥れようとしているのか‼?
「オレオレ詐欺とかして、道外れないようにしてくださいね」
「は?」
「いや、だって、あたしを騙そうとしてるんでしょ?」
「お前、……」
何でそこで黙る。
「…とにかく、帰るんだろ?」
「はい」
「なら、早く帰れ」
「……………」
なんか、符に落ちないなぁ。
けど、まぁいいや。
今は優季の方が優先だし。
「じゃあ、またね。はるるん、先輩」
二人に手を振り、あたしは帰路についた。