「……えーっと、………」


何ではるるんはあたしの左手を握ってんのかな?


何で志貴先輩はあたしの右手を握ってんのかな?






「あ、もしかして、美沙ちゃんに惚れちゃいましたか」


「「ふざけるな」」


酷くね‼? 


嘘でも肯定してよ‼


「…じゃあら何で腕を掴んでるのかな?」


あたしは彼らに笑みを向ける。


さっさと放して、と気持ちをぎゅっと込めて。


そしたら、比例するように彼らの手を握る力が強くなる。


なんか、あれだよね、あれ。


握手会みたい。


「……お前………………」


「何でしょうか?志貴先輩」


「………………」


何も言うことないなら、呼ばないで欲しいなぁ。


なんか、無視られたみたいじゃないか。


「………………」


何とも言えない空気があたし達を包む。


何この重い空気。


そんなつもりじゃなかったんだけど。


誰も口を開かず、つぐんだまま。


その空気を破ったのはその数十秒後。


それは突然だった。




『グゲゲゲゲ、グゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ、グゲゲゲゲゲゲ、グゲゲゲゲ』





「あ、……メールだ」


ポケットの中のスマホが震える。


「はっ‼?それ、着信音‼?」


はるるんがあたしを凝視する。


「晴、コイツの趣味につっこむな。キリがねぇよ」


それはどういう意味でしょうかねオイ。


「メールみたいから、手放してもらっても良いですか?」


やっと空気が壊れたんだ。


さっさと逆戻りする前に撤退しなければ。


「あぁ」
「ほーい」



二人とも軽い返事であたしの手をゴミのように投げる。


いや、ちょいと酷いよね‼?


掴んできたのそっちだよね‼?


そう言いたいが大人だから言わないでおいた。