優季が優しいってのは、分かった。
うん。みんなのために喋らないってことも、分かった。
けどね、けどね。
「世界の平和を守れても、あたしは寂しい…っ」
だって、あたしともう喋ってくれないんだよ?
あたしは寂しくて堪らない。
優季と喋れないのなら、人類道ずれの地獄行きの方がマシ。
「優季、一緒にお話しよ?」
「……………」
ぶんぶん。彼は大きくかぶりを振った。
「あたしより、人類を選ぶっていうの?」
「……………」
彼はノーリアクション。フリーズした彼は、少ししてから名案が浮かんだのか徐に立ち上がって、棚の方へ向かっていった。
彼が取り出したのは、落書き帳。
病室でしか過ごさないあたしの暇潰しの1つである。
鉛筆を取り出して、落書き帳に何かを書いていく。
「……………」
無言でつき出された落書き帳には、男の子にしては丁寧な文字が羅列していた。
『お前、何言ってだ』
ただし、言葉には棘がある。
「優季こそ、何書いてんの。あたし、そのページに絵描きたかったんだけど」
『新しいヤツ買ってやるから我慢しろ』
「いや、そういうわけじゃなくてね‼?」
『どういうわけだよ』
「いや、うん。はい。……それより、優季、あたしと人類の2つで人類の方があたしより大切?」
本題を切り出すと、彼は眉間にシワを寄せて、2ページ戻って、最初の文字を表示する。
『お前、何言ってんだ』
いや、優季こそ何やってんの。
ついつい、ノリつっこみ。