私はと言うと、双葉ちゃんに勉強を教えてもらっているわけでも、その双葉ちゃんの解説を聞くために彼女の周りにいるわけでもない。
私は、放課後の教室で。ただ本を読んでいるだけの地味な女。
彼女と話せるような、勇気も。頭も。何もないのだ。
「えっと、どれ?」
「これなの。あまり、書いてある意味が理解できなくて…」
かなり残念そうに答える学年首席の彼女。
彼女の表情はまるで失恋した乙女のようだ。
「じゃあ、読ましてもらっていい?」
「うん。どうぞ」
「ありがと」
テキストが双葉ちゃんのもとに渡ってから数秒。
双葉ちゃんは、彼女と世間話を話し出す。
「高校、どこ行くの?」
「えっと、…私は勉強しか取り柄がないから…一応、目標は………緑陽女学園」
「えっ!すごく賢いところじゃん!すごいっ」
「双葉ちゃんはその気になれば、行けるよ」
尤もである。
「私は、勉強に興味がないから。適当にお兄ちゃんがいる北府高だよ」
そこもレベル高いよ。
ついついツッコミたくなる時がある。
そもそも緑陽女学園と北府高校の偏差値は一緒くらいで。
緑陽女学園国際クラスがとてもレベルも倍率も高いのだ。
学年首席の彼女は国際クラスを狙っていると思う。
数分世間話をした彼女らは、勉強モード。
「えっと、…この古文は高校でやるようなものでね、主人公がここに書いてある、」