絡まる指と指。
記憶の泡は、爆ぜては消える。
「さくらさん、さくらさん」
全力で約束守ろうとしたけど、出来なかった。
志貴先輩のさくらさん愛が、勝っちゃった。
けど、ピアス1個ゲットしたんだよ?
ねぇ、さくらさん。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
頬を伝うのは涙。
彼女は、悲しそうに眉を下げた。
風もない空間なのに、彼女の髪ははらはらと靡ていている。
「ごめんなさい、美沙ちゃん」
ゆっくりと彼女の口は言葉を紡いだ。
「美沙ちゃんがこんなにも苦しんでいたなんて知らなかった。バカなのは私。自分のことしか、考えてなかった」
「ちが、っ………さくらさんは、そんな事してないッ」
「ふふふ。美沙ちゃんは優しいのね。でも、本当の事なの。志貴くんの事、もっと苦しめちゃった」
「苦しめたのは、…っ、あたしなんです…っ、」
「違うわ。美沙ちゃんは、むしろ志貴くんの苦しみを緩めてくれた。ありがとう。とっても、感謝してるの」
涙が途切れる事がなく溢れていて、彼女の顔なんて見えない。
「美沙ちゃん」
冷たい彼女の手が頬に触れた。
「ごめんなさい。美沙ちゃんを苦しめたのは、紛れもなく私」
「…………っ、」
「青春って、難しいのね。何が間違えて、何が正しいのか分からない」
うん。そうだね。
あたしも頭の中ごちゃごちゃで、もう何が何だか分からない。
「私ね、思うの。青春って、矛盾と後悔で出来ているんだなって」
「後悔、なんて、してない、………」
「美沙ちゃんは意地っ張り。美沙ちゃんは、優しいから、1年自体には後悔してない。けど、後悔してる」
嫌だ。嫌だ。聞きたくない…ッ。
「伝えてないこと。まだ、あるんでしょう?」
ふさくらさんとあたしの間に小さな風が、吹いた気がした。
まるで、それは境界線。