目頭が熱くなって、視界がぼやけた。
何かにつまずいたのか、バランスが崩れて、真っ黒な地面に膝をついた。
痛くもなくて、熱くもなくて、自分に腹を立てた。
「あれ、っ、…」
足の力がふっと抜けた。
もう嫌。嫌。こんなの嫌だ。嫌い。
悪態を散々並べても、一向に変わらない視界の色。
本当は怖かった。
死にたくなかった。もっと、みんなと居たかった。
馬鹿やって、アホやって、ヘラヘラ笑っていたかった。
もし。あの時、さくらさんに出会わなかったら、こんな気持ちにならずに済んだのに。
最低な考えが頭に過(よぎ)った。
1年生きて、彼らから色を貰った。
とても楽しくて、普通の高校生になれた気がした。
──なのに、後悔してるなんて。
この1年はあって欲しかった。それと同時に、存在して欲しくなかった。
矛盾。矛盾だらけだ。
優季には、堂々と忘れて欲しくない宣言をしてといて、志貴先輩達にはしなかった。
けれど、忘れて欲しくない。
だから、遠回しにさっき会いに行って忘れるなと釘を刺してきた。
とんだ卑怯者だ。
志貴先輩達に忘れて欲しくないと宣言をしなかったのは、まだ認めたくなかったから。
たった1年であたしの中の心残りが増えてしまうのを認めたくなかったから。
矛盾。矛盾ばっかり。
この1年を後悔しているようで、後悔していない。
もっと生きたかった。けれど、あたしの生きる意味って?
お母さんにお金で負担をかけて。優季を縛り付けて。
なんで1年前、手術を受けたか。そんなの決まってるでしょ。
───生きる意味を貰ったから。
正確に言うと、さくらさんから生きる意味を譲って貰った。
だから、生きた。
だけど、今回は?
もうない。生きる意味も、あたしの存在する意味も。
何にもない。
そうだ。何にもない。
生きる意味が1ミリも1ミクロンもない。