忘れないで欲しい。けれど、幸せになってほしくて、相手を優先させた。
そんなさくらさんは、きっと心が綺麗な人。
それに対して、あたしは心が汚い。
幸せになって欲しい。けど、あたしを忘れちゃうなんて許さない。
結局、忘れられないように。見捨てられないように。
最後に彼らに残してしまった。
───忘れないで。
必死になって、叫ぶ。
ダメだと分かっても、止めたくない。
だって、忘れて欲しくない。
忘れるなんて、許さない。
自己中だし、傲慢だし、ウザいし、馬鹿馬鹿しいことくらい分かってる。
でも、憐れと思われても、欲しいものがあるの。
ちらり、視界に映ったのは白銀。
綺麗な雪と鮮明な赤が混じったあの日。
───お父さん。
殺してごめんなさい。
誕生日プレゼントにぬいぐるみが欲しいなんて、言ってごめんなさい。
優季は、あたしのせいじゃないって言う。
けど、やっぱりあたしにはそう思えなかった。
だって、そうでしょう?
雪が降っていた。トラックが通っていた。そういう事故になりうる要素があったとしても。
そもそもあたしがぬいぐるみを欲しがらなかったら、事故なんて起こらなかった。
綺麗事なんかで済むわけがない。