「……………」
止めだ止め。無理無理無理。
編み込みをしようとして、ただ絡まっただけの髪から手を離す。
離しても、綺麗に元通りにならなかったので、少しカッチーン。
やや雑に髪の毛を櫛で解いた。
その時、タイミング良く開かれた扉には、私服姿の鈴村さん。
「あら。髪の毛、結ばなかったの?」
「…………何でもいいじゃないですか」
「何不機嫌になってるよ。行くわよ」
冷たっ!塩対応過ぎ。
「……………へーいへーい」
セーターのポケットに手を突っ込む。
ちらり彼女を見ると、少し殺気立って、あたしを見ている。
「返事は?」
「……ハイ」
この人、ほんと抜け目ない。
ポケットに手を突っ込むのも止めて、ドシドシと彼女の後を追う。
足音が煩い、と注意を受けたのは言うまでもない。
滑るように彼女の車に乗って、静かに車は動き出す。
ハイブリット車か電気自動車かして、走行中も静か。
技術の発展を感じた。
「…………そういえば、」
鈴村さんは、鈴を鳴らすように声を出した。
「朝早くから優季くん、来てたわね」
「朝早すぎて、あたしが目が覚めた時寝てましたけどね」
「寝起きを襲うなんて、美沙ちゃん大胆ね」
「どういう解釈でそうなるの」
何で優季が寝てたら、あたしが襲ってんの。
「あら、違うの?」
「とても違いますけど」
「私、扉の隙間からそっと見てたのだけど、寝てる彼に顔近づけてたじゃない」
それ立派な覗きっすよ。
朝っぱらから何しちゃってんの。
扉から覗くって、ほんと何してんの。
「……写真。写真撮ってたんですよ」
「キスの?」
「んなわけあるかい!優季の寝顔とあたしの変顔のツーショットですーー」
あら残念。彼女は声に抑揚もなく、そう言った。
ロボットオバサン。残念にも思ってもないことバレバレです。
会話をしていたら、北府学校に到着。
夏休みと同じぐらいの期間行っていないだけなのに、とても懐かしい。