「優季には、秘密で」


シーというジェスチャーを彼女に送る。


唇に触れる人差し指は今日も冷たい。


「優季くんにいえば、やり易くないかしら」


確かにそうだけども。


「最近の優季、少し変なんですよ。極力無事を増やしたくないというか、」


「本音は?」


ソウデスヨネ。


「ぶっちゃけ優季クンが邪魔」


「優季くん聞いたら、泣くわよ」


「女泣かせですし、大丈夫」


彼に告白して、泣いた女の子は数知れず。


「優季くんらしいわね。分かったわ、秘密にしてあげる」


「ありがとうございます」


「いいえ」


彼女は品良く笑って、踵を返す。


彼女は、扉に手を掛け、振り返った。


「制服は緑陽女学園でいいかしら。美沙ちゃんに似合いそうだわ」


緑陽女学園とは、北府高校と県トップの偏差値を争う女子高で。


緑陽学園国際クラスは、北府より偏差値は高いが、学校全体の偏差値は北府の方が高い。


…………というのは、どうでも良くて。


緑陽女学園の特徴と言えば制服が可愛すぎること。


「制服に負けちゃって、存在が消えちゃうんですけど」


「あら。美沙ちゃんの顔といい勝負をしてくれるわよ」


「…………………」


5回コールドゲームで、制服軍の圧勝だわコンチキショー。


「じゃ、また。お昼に会いましょう」




彼女は、それだけ溢して外の世界へ消えていった。