優季と入れ替わるように入って来たのは、鈴村さん。
「おはようございます、鈴村さん」
「おはよう、美沙ちゃん」
「…その、1つやりたいことあるんですけど」
「いいわよ」
何するかも言ってないんですけど。この人、テキトー過ぎるんですけど。
「あたし、もう一回学校に行きたい」
「不法侵入する気かしら」
「だから、頼んでるんですけど!!コネを使って、ね‼?オーケー‼?」
「それ。人に頼む態度かしら。いつも、言ってるわよね」
彼女にキッと睨まれる。
「……………オネガイシマス」
長年この人と一緒にいるが、勝てる気がしたことがない。
「ふふふ。それでいいわ。しょうがないわね。やるのは、……………明日、でいいかしら」
「そんな急でいいの?」
「後の方が面倒なの。今のうちにさっさと行っておく方が楽なのよ」
それは、あたしへの優しさじゃなくて、自分の仕事量を考慮しての考えだったんですね!
鈴村さん優し、……………なんて、思っちゃった数秒前のあたしの気持ちを返して頂きたい。
「あ、それと」
「何かしら」
「一応、転校したって事になっているので。違う学校の制服をお借りしたいのですが………」
「あぁ、そんなこと。分かったわ用意しとくわ。今日は明日に向けて、静かにしててちょうだいね」
なんかこの人心なしか嬉しそうなんですけど。
人間的に終わってません‼?
試しに聞いてみた。
「鈴村さん、嬉しそうだね」
「もちろん。今日、美沙ちゃん静かにしてくれるし、明日は美沙ちゃんのお世話しなくてもいいもの」
「明日、ぶっ倒れて仕事増やしましょうか」
「そんな事しないってこと分かるから、別に何とも思わないわ」
すべてお見通し。
やっぱり、彼女に勝てる気がしない。
そもそも大人に勝とうとする事自体、無理に等しい。
カナちゃんないし鈴村さん。
あと、優季ママの押しに討ち勝つのも至難の技だ。